2008 ランキングサーキット大会
観戦記(6月1日決勝)

2008年日本ランキングサーキット 大会最終日

 各種目決勝戦が行われました。
 結果は別項を参照下さい。

『優勝の栄冠を手にして』

 さて、女子シングルスからです。
 後藤愛選手(NTT東日本)vs 樽野恵選手(NTT東日本)
 いわゆる“同僚対決”でしたが、後藤選手が先輩の意地を見せました。
 第1ゲーム、立ち上がり、硬さが見られた後藤選手。
1−5とリードを許します。
「これ以上離されたら、乗せてしまう」(後藤選手)との危機感を覚え、攻勢に転じ、
8−6と一気に逆転。
ここからしばらく競り合いが続きますが、抜け出したのは後藤選手でした。
12−11から小刻みな連続ポイントを重ね、15−13からは一気に5ポイント連続で奪取
して、第1ゲームを奪いました。
 とにかく後藤選手、ミスが少なかった。ストレートのクリアーの打ち合いから、クロス
へ落とすカットやドロップショットも効果的に決まりました。
 第2ゲーム。大きく後藤選手に傾いた流れを、樽野選手はどうすることもできなかった
ようです。
 立ち上がりの競り合いで後手を踏むと、もはや反撃の糸口を見失ったように見えました。
ゲーム後半はミスショットも目立ちました。
 後は詰めを誤らぬよう、後藤選手は思い切って多彩なショットを打ち込むだけです。
「普段の練習で樽野選手の球に慣れていることが勝因のひとつでした。力はあるし、サウス
ポーだし、それに器用にショットを打ち分ける技術もあるから、本当に彼女の球は打ち難い
んです」(後藤選手)
 一方の樽野選手。敗れた悔しさをにじませながらも、新たな課題を見出せたことに手応え
を感じていたようでした。
「課題は、やはり精神面ですよね。今日の試合でも、打つ前に悩んでしまうんです。ああ、
このショット打っても、愛先輩には分かってしまっているんだろうなとか。もっと自信を
持って打ち込めばいいのに。でも、プレイに安定感が出てきたと思っています。以前ほど
試合ごとの出来幅が小さくなりました」
 さて、今大会でその存在感をアピールした後藤選手。今後の目標は?
「まずは海外で戦える自信をつけること。6月下旬のタイ(24日〜29日、グランプリゴールド、
バンコク)がひとつの勝負です。それから全日本総合で優勝すること。廣瀬栄理子選手
(三洋電機)が出ているときに勝ちたい」
 ターゲットは明確です。

 続いては男子シングルス。佐々木翔選手(北都銀行)の貫録勝ちでした。
「難しい大会でした。大会前は気持ちが入らなくて、一勝もできないんじゃないかと不安
でした。でも、ベスト8に残った時点で、ここまで来たら、しっかり戦って優勝しようと。
体はきついけれど、勝てば次へと前向きになれますから。オリンピックレースは終わりました
が、好調を維持しているという自信があります。スーパーシリーズでは世界のトップ10以内の
選手と対戦して勝ちたい。今は“打倒、中国!”を目標に練習しています」

 女子ダブルス。ナショナル候補メンバーの松尾静香(三洋電機)&今別府靖代(ヨネックス)
ペアが、コンビネーションに冴えを見せて優勝を果たしました。
「2人の力を出せました。内容のことを言い出したら色々ありますが、ここでしっかり勝てて、
自信になりました」(今別府選手)
「今回は、どの試合も2ゲーム目が良くなかった。1ゲーム、良い形で終わっても、2ゲーム目
の入り方が今後の課題です」(松尾監督)
 決勝戦では、2人、しっかり声を掛け合っていた姿が印象的でした。でも、もっと気迫を前面
に出して戦うようにしないといけません、と松尾選手。ネットはあっても、闘争心は重要。
気持ちも乗っていける。
 尚、この今別府靖代選手は、シングルス全日本女王の今別府香里選手(三洋電機)の実姉です。
なんと4人姉妹の下の2人なのだそうです。
 闘争心という意味では、準優勝の田井美幸&大日方美弥子ペア(NTT東日本)は、気迫を
前面に出しながら勝ち上がってきました。
「初めて組んだ大会で、この成績は大満足です。大日方も同級生との対戦で勝つことができて、
良い経験になったと思います」(田井選手)。このペア、今後も組むかどうかは未定だとか。
7月(9日〜13日、熊本県八代市)の全日本実業団では、どういうペアリングで挑むのか、
要注目です。

 最後は男子ダブルスです。
 2ゲーム共、セッティングにもつれる接戦を制したのは、数野健太(日本ユニシス)&早川賢一
(日本大学)ペアでした。社会人と大学生の異色ペアですが、もう中学の頃からの同級生です。
準決勝では、ナショナルメンバーの川口馨士&川前直樹ペア(NTT東日本)を下しての決勝戦
進出でした。
「あの試合は向かっていけたことが勝因でした。向こうのペアも、ちょっと受けてしまっていたから。
でも自信にはなりましたね」(数野選手)
 そして、満を持しての決勝戦。
「環境が違うので、いっしょに練習する機会は限られていますが、今日はとにかく2人でローテー
ションを意識して、足を動かそうと話していました」(早川選手)
 その言葉どおり、前衛・後衛の違いのない、めまぐるしいほどのローテーションで、コートを
動き回りました。勝負どころの競り合いでも臆することなく攻めていました。
「目標は全日本総合での優勝です。バドミントンをしている者ならば、誰もが目指す目標です。
日本で一番デカイ大会で勝ちたい」(数野&早川選手)。昨年は3位。より現実的な目標です。
 舛田圭太&大束忠司ペア(トナミ運輸)が牽引する男子ダブルス。池田信太郎&坂本修一ペア
(日本ユニシス)が続いていますが、この日の優勝ペアも、日本を牽引する日も遠くないことで
しょう。

 ということで、2008年日本ランキングサーキットが終了。6月1日を機に、ランキング規定が
改定されています。ランキングポイントは、個々の選手の力を客観的に判断する材料になります。
 国内はもとより、国際大会も対象。日本バドミントン協会HPで、時おり、選手らのランキング
をチェックしてみて下さい。

 次回のレポートは、7月、全日本実業団選手権の予定です。

                (取材・文/佐藤純郎)