2009 日本ランキングサーキット大会
5月23日(土)〜5月26日(火) 埼玉県さいたま市記念総合体育館


【一日目観戦記】

 ランキングサーキット大会5月23日

 ランキングサーキット第1日は、男女シングルスでは1、2回戦、
ダブルスは1回戦までが行われました。
 *文中、()内の順位は09年5月8日発表の日本ランキングです
 今年は、特に女子シングルスでの参加選手が充実しており、全日本
総合選手権並みの、ハイレベルな戦いが期待されています。
 そんな中、初日、1回戦で大きな波乱が起こりました。
 第2シードの後藤愛選手(NTT東日本、2位)が栗原文音選手
(日本ユニシス、41位)に敗れるという波乱が起こりました。

「どんな大会であっても、初戦は難しい試合になります。特に今日は、
栗原選手は良い選手だという印象もあって、立ち上がり、気持ちが受
けに回ってしまいました」
 と、後藤選手が振り返ります。
 1ゲームをわずか10本で失い、2ゲームにはなんとか立て直そうと
試みるのですが、勝負所でミスが続き、19本で力尽きました。
「誰が対戦相手でも、私は受けに回っては勝てません。もう一度ここ
から出直します」
 悔しさを滲ませながら後藤選手、懸命に再起への決意を語ってくれ
ました。

 初戦の難しさを教えてくれた選手がもうひとりいます。
 今大会の第1シード・廣瀬栄理子選手(三洋電機、1位)です。
 今年1月のマレーシア・オープン以後、全ての大会をキャンセル。
ひたすら一昨年5月、そして昨年12月に痛めた右足太もも裏の故障の
完治を目指してきました。
 そしてこの日、復帰戦を迎えました。相対するのは田村千秋選手
(専修大学、41位)。結果は、2(17−21、21−12、21−19)1。
 私の眼には、何もかも少しずつズレているように見えました。
自慢のステップも、世界レベルにあるフォア奥からのクロスカットの
切れ味も、素早い動きを支えるアンティシペーション(予想)すらも、
本調子にはない。それ故、全体のプレイのスケール感が、いつもより
ずっと小さく見えたものです。
 加えて、田村選手の積極的なプレイ(かなり好調と見ました)と相
まって、廣瀬選手は大苦戦を強いられました。
 試合時間が優に1時間を超えた頃、最後の1本がネットインし、歓喜
の雄叫びを上げたのは廣瀬選手の方でした。
 勝てば、次のステップへ進むことができます。
 2回戦。平山愛選手(七十七銀行、24位)に対しては、12本、18本。
ストレートで勝負を決めました。
「久しぶりの試合でしたが、あまり緊張はしませんでした。1回戦は、
とにかく田村選手が強かったです。試合を重ねながら、上げていけれ
ばと思います」
 2つ勝ったことからの安堵からか、廣瀬選手、いつもの笑顔が見られ
ました。明日は、しぶとくパワフルな試合が特徴の今井幸代選手
(NEC SKY、11位)です。現在の調子を知る、絶好のバロメーターとなる
でしょう。

 ランキングを基準に考えれば、他にもアップセットは起こりました。
 三木佑里子選手(三洋電機、37位)2(18−21、21−18、21−14)1
打田しづか選手(日本ユニシス、7位)
 ファイナルゲームは、三木選手のスタミナ勝ちと言えるかもしれませ
ん。

 女子シングルス、初日の愁眉を飾ったのは、若手2人の熱戦でした。
 栗原文音選手 2(21−19、16−21、21−17)1 橋本由衣選手
(NTT東日本、25位)
 後藤選手に勝った勢いで、そのままベスト8入りを目指す栗原選手。
対する橋本選手は、1回戦、フルゲームの末、ランキングもほど近い
江藤理恵選手(東海学院大学、22位)を破っています。橋本選手の最大
の魅力は、普段の愛くるしい笑顔から試合になると一変する勝気な性格
です。インターハイでの試合を見て、大いに興味をそそられたものです。
 一方の栗原選手。高校卒業以降、ナショナル候補に名前を連ねてきまし
た。しかし、1ゲーム目は抜群の試合運びで取りながら、2ゲーム目後半
になると失速、逆転負けという、試合展開がお決まりになってしまいまし
た。
「去年はそういう試合展開ばかりでズッと悔しい思いをしてきました。
この大会で私のランキングは下から2番目。誰と当たっても、思いっきり
ぶつかっていくだけです。後藤選手との試合では、1ゲームを取れて、
絶対にこのまま押し切ろうと思っていました」
 と、振り返る栗原選手。年下の橋本選手相手に、悪い癖が出そうな展開
になりかけましたが、ファイナル、中盤の勝負所で逆転。そのまま押し切
りました。
「ベスト8に入ったことに満足せず、このチャンスを活かしたい」
 身長170cm。日本ユニシスの同期、野尻野匡世選手(12位)や打田しづか
選手らが結果を残す中で、ひとり出遅れ感があった逸材が、ようやく少し、
陽のあたる場所に躍り出ようとしています。
 準々決勝の相手は、脇田侑選手(岐阜トリッキーパンダーズ、16位)。脇田選手、
村松瑞穂選手(三洋電機、10位)に競り勝ってのベスト8入りです。

 尚、先のスディルマン杯代表の佐藤冴香選手(日体大、17位)は2回戦で
今別府香里選手(三洋電機、5位)の前に屈しました。
 佐藤選手が振り返ります。
「1回戦のときとはまったく違う風の流れにうまく対応できず、ミスを続け
てしまいました」
 今別府選手は1、2回戦共に、1ゲーム目、ややもたつきながら、2試合
とも、ストレート勝ち。特にナショナルメンバーになった佐藤選手に対し、
2ゲーム目、9本で退けたことは高い評価に値すると思います。これが
“復調”のきっかけとなることを願います。
 もうひとりのスディルマン杯代表、関谷真由選手。広州での好調さを持続
し、2試合とも危なさを感じさせない内容で完勝です。
 明日は三洋電機同士&同級生対決で、関谷真由選手 対 今別府香里選手が
実現します。

 もうひとつのブロックでは、樽野恵選手(NTT東日本、4位)がお馴染
みの元気のいい掛け声と共に、順調にベスト8入り。
 そして幡谷好美選手(NEC SKY、15位)。取りこぼしのない、安定した戦い
ぶりで勝ち上がってきました。

 さて、駆け足で男子シングルスへ。
 こちらは1位の田児賢一選手(NTT東日本)、リハビリ中の池田雄一選手
(日本ユニシス、4位)を除けば、ほぼフルエントリーの様相。こちらもハイ
レベルな戦いが続出しました。

 ベスト8の顔ぶれは、佐々木翔選手(トナミ運輸、2位)、早坂幸平選手
(JR北海道、11位)、竹村純選手(JR北海道、7位)、古財和輝選手
(トナミ運輸、6位)、佐伯浩一選手(NTT東日本、5位)、武下利一
(敬和学園大学、18位)、山田和司選手(日本ユニシス、9位)、堀川善生選手
(NTT東日本、21位)です。

 スディルマン杯日本代表、佐々木翔選手、満足のいく試合内容で貫禄のベスト
8入り。
「優勝を狙いにいって、優勝することって難しいと思うんですよ。でも、今大会
では、そのことにチャレンジしたい。スディルマンでもそうでしたが、ここでも
また、自分自身との闘いになると思っています」
 決然と“優勝宣言”。今後の戦いぶりにご注目下さい。

 尚、竹村選手に果敢に挑んだ和田周選手(日体大、16位)、佐伯選手に挑んだ
園田啓悟選手(くまもと八代YKK AP、15位)らは共に、ファイナルのチェンジ
エンド後の勝負所ではねのけられました。
 特に園田選手は、ファイナル16本から足が止まってしまい、本当に残念でした。
でも、あそこで勝負できないと、もうひとつ上の段階には進めないと思います。
頑張って、としかアドバイスができないのだけれど。

 最後に、女子ダブルスでも久しぶりにコートに戻ってきたペアがありました。
一昨年の日本リーグ最終戦で痛めたヒザの回復がおもわしくなかった多谷選手。
今大会は満を持してのペア復活での参加となりました。
 多谷郁恵&脇坂郁ペア(三洋電機、5位) 2(21−11、21−9)0 板垣有紀
&宮内唯ペア(日体大、)
「(相手が)出てこなくて助かりました」(脇坂選手)という展開だったのです
が、「メッチャ、緊張したけれど、勝てて良かったです」(多谷選手)と話して
くれました。
「この先も、一つひとつ、です」
 最後は落ち着いて脇坂選手がまとめてくれました。

 大会2日目は日曜日。
 より多くのファンの方々に来場していただき、日本トップレベルの戦いを堪能
していただきたいものです。

            (取材・文/ライター・佐藤純郎)

【二日目観戦記】

 ランキングサーキット大会5月24日

 大会2日目、各種目のベスト4が出揃いました。
 勝ち残った選手らを、
明日の組み合わせで紹介しましょう。
 
 男子シングルス:
 佐々木翔選手(トナミ運輸)
          vs 竹村純選手(JR北海道)

 佐伯浩一選手(NTT東日本)
       vs 山田和司選手(日本ユニシス)

 さて、準決勝進出を決めた竹村選手。
 準々決勝は、
 竹村選手2(23−21、11−21、21−12)1
          古財和輝選手(トナミ運輸)
『1ゲームを取って、2ゲーム目、11−17になった時点で、
ムリをしてリスクを犯すより、
ファイナル勝負に切り替えようと決めました。
 やったことがない戦い方でしたので、不安はあったのですが、
ファイナル、うまくスタートダッシュできて良かった。
 明日は昨年のこの大会の決勝でやられている佐々木選手。
 去年のようにはいかないことを見せ付けたいと思います』

 山田和司選手2(21−16、21−18)0
               堀川善生選手(NTT東日本)
 持ち味のスピードに乗ったプレイで、
勝ち進んできた山田選手。
『海外での試合を経験したことで、
この大会では今までとは異なる手応えを感じています。
 追いつかれても気持ちに余裕があります。
 佐伯浩一選手は僕と同じようにスピードで勝負するタイプ。
 流れをつかんで、最初から得点を重ねていけたら、
僕のペースになると思います』

 女子シングルス:準決勝のカード
 廣瀬栄理子選手(三洋電機)vs 今別府香里選手(三洋電機)

 幡谷好美選手(NEC SKY)vs 栗原文音選手(日本ユニシス)

 準々決勝
 廣瀬選手 2(21−14、21−17)0今井幸代選手(NEC SKY)
 初戦より2戦目、そして3戦目となった準々決勝。
 廣瀬選手は順調に“復活”への道のりを歩んでいると言えます。
まだ完全ではないにしても、昨日とはひと味違う廣瀬栄理子選手の
姿を見せてくれました。
『試合を重ねるに連れて、良くなっていっている実感があります。
 明日は、自分らしさを出して、良い試合ができればと思います』

 今別府香里選手2(19−21、21−15、21−17)1
               関谷真由選手(三洋電機)
 今日一番の注目の試合は、
実績で勝る今別府選手が逆転勝ちをしました。
 第1ゲーム、1−8までリードされた今別府選手でしたが、
落ち着いて差を詰め、19本まで挽回。
 このゲームは失ったものの、
2ゲーム、ファイナルの主導権を握る
きっかけとなったように思います。
『(関谷選手が)同じチームだとか、
そういうことは意識せず戦うことができました。
 この大会は、自分の良い時のイメージに近づいている、
そんな手応えを感じています』

 幡谷好美選手(NEC SKY)
  2(21−14、17−21、21−17)1 樽野恵選手(NTT東日本)
 気合を前面に出して向かってくる樽野選手を、
幡谷選手は巧みなゲームマネジメントで退けました。
『試合前は樽野選手のクセを思い出して、
その点だけは気をつけてのぞみました。
 最近は樽野選手の方が良い成績を収めてはいますが、
この先の全日本実業団での対戦も考えると、
負けるわけにはいかなかった。
 2ゲームで終わらせるチャンスがあったのですが、
勝ったから良かったけれど、
勝てるチャンスを逃してはいけないですね』

 栗原文音選手(日本ユニシス)
  2(21−17、16−21、21−19)1
          脇田侑選手(岐阜トリッキーパンダーズ)

 栗原選手の快進撃が続いています。
 この日もフルゲームの試合を粘り勝って、
準決勝に駒を進めました。
『苦しい試合でした。
 疲れで腕が下がって打点が低くなっていました。
 そのことをインタバルで指摘されて、
“当てるだけで良いから、前へ落とせ”
というアドバイスをもらい、どうにか接戦をモノにできました。
 去年までの悔しさを払拭し、自信がついてきています。
 体とかはまだまだで、課題はありますが、
明日もまた、ぶつかっていきたいです』                  

 男子ダブルス:準決勝のカード
 劉志遠&黒瀬尊敏ペア(トナミ運輸)vs
           平田典靖&橋本博且ペア(トナミ運輸)
 
 佐藤翔冶&川前直樹ペア(NTT東日本)vs
           安村康介&米隆夫ペア(トナミ運輸)

 第1シードの廣部好輝&小宮山元ペア(日本ユニシス)が
開幕直前、棄権をした男子ダブルス。
 準決勝進出4ペアの内、
3ペアがトナミ運輸所属となりました。
 一角に食い込んだ佐藤&川前ペア、
ここまで1ゲームも落としていません。
 充実した内容と共に、順当に勝ち上がってきました。

 平田&橋本ペアはスディルマン杯代表ペアです。
 2人での出場がなかっただけに、
今大会への集中力を高めているように見えます。


 女子ダブルス:準決勝のカード
 多谷郁恵&脇坂郁ペア(三洋電機)vs
          松尾静香&内藤真実ペア(三洋電機)

 赤尾亜希&今別府靖代ペア(ヨネックス)vs
          日野由希江&小池温子ペア(広島ガス)

 本命不在と思い込んでいましたが、
結局は第1から第4シードまでの4ペアが名を連ねました。
 多谷&脇坂ペアは本格復帰への道を歩み始めたばかり。
 松尾&内藤ペアの本格的なスタートは今年に入ってから。
 赤尾&今別府ペアは、この春にスタートしたばかり。
 日野&小池ペアが、国内限定ではありますが、
最も経験値が高いペアと言えるかもしれません。

 さて、どんな戦いが待っているでしょうか?
 月曜日ですが、午前10時、試合開始です。


            (取材・文/ライター・佐藤純郎)

【三日目観戦記】

 ランキングサーキット大会5月25日

 各種目の準決勝が行われました。

 女子シングルス:

 今別府香里選手(三洋電機)
   2(17−21、21−17、21−14)1 廣瀬栄理子選手(三洋電機)

  第1ゲームを奪った廣瀬選手。
  その勢いを駆って、攻勢に出るかと思われた廣瀬選手だったのですが、
 それを上回ったのは、今別府選手でした。
  第2ゲーム後半から、クロスのカットの切れが抜群。
  次々にネット際の厳しいところにシャトルが沈みました。
  一方、廣瀬選手の方は得意のカットが決まらず、
 次々に今別府選手に拾われ、反撃を喰らうこととなりました。

  互いの調子の明暗は、試合が進むに連れて鮮明になっていきます。
  そして最後は、廣瀬選手のショットがラインを割り、ゲームセット。

  今別府選手、公式戦で初めて、廣瀬選手を破りました。
  廣瀬選手は故障開けとはいえ、05年の全日本総合選手権決勝で、
 米倉加奈子さん(現ナショナルコーチ)に敗れて以来、
 国内大会での日本人選手相手の敗戦でした。

 今別府選手の話
『第1ゲームを取られた後、悔いが残る試合をするのは嫌だと、
それだけを考えていました。
 今日は自分のカットの切れは良かったと思います。
 廣瀬選手には初めて勝ちましたが、ミスがまだまだ多いし、
優勝したわけではないので満足はしていません。
 明日は思い切って戦うだけです」

 廣瀬選手の話
『もちろん優勝はしたかったのですが、
ケガからのリハビリの中でゼロからスタートして、
またバドミントンをできる場所に戻ってこれたことを感謝したいです。
 この大会に向けて、前の球に対応する練習を重ねてきました。
 その分、上からのショットがなかなか決まらず苦労しました。
 負けたことは悔しいですが、ここからまた、新しいスタートです』 



 幡谷好美選手(NEC SKY)
   2(21−18、16−21、21−13)1 栗原文音選手(日本ユニシス)

  1回戦、第2シードの後藤愛選手(NTT東日本)を破った栗原選手。
  快進撃が遂に歩みを止めました。
  封じたのは幡谷選手。
  お互い、粘り強いレシーブからカットなどを織り交ぜた攻撃がスタイル。
  しかし精度の高さで一歩、幡谷選手が上回りました。

  幡谷選手の話
 『初日の2試合をストレートで勝ったことで、
 疲れを溜めることなく戦えています。
  三洋電機の選手は体が強いというイメージがあります。
  なので、明日の決勝戦では気持ちで負けないこと、
 自分のできることを精一杯やることです。
  チャンスは必ずありますから』

  栗原選手の話
 『ここまで来れたし、試合もファイナルまでいったけれど、
 だからこそ悔しい気持ちの方が強いです。勝ちたかった。
  この大会では自信になった部分と新たな課題が見つかりました。
 もっと練習して強くなりたいと思います』


  男子シングルス

  佐々木翔選手(トナミ運輸)2(21−9、21−16)0 竹村純選手

  佐々木選手のスケールの大きいプレイが、竹村選手を圧倒しました。
  スディルマン杯での経験(Dan LIN戦など)が、
 大きな自信を生み出したと思います。

  佐々木翔選手の話
 『昨日の早坂選手(幸平、JR北海道)や今日の竹村選手など、
 同い年の仲間たちと、こういう大会で試合できることが嬉しいですね。
  優勝を狙って優勝する。その目標を実現させたいと思います』

  竹村選手の話
 『なんとか食い下がりたかったのですが、去年の佐々木選手より、
 また強くなっているなと感じました。僕もまだまだ頑張らないと』


  佐伯浩一選手(NTT東日本)
        2(22−20、21−13)0 山田和司選手(日本ユニシス)

   第1ゲームの立ち上がり、ペースをつかんだ佐伯選手を、
  後半、山田選手がよく追いかけましたが、あと一歩、及びませんでした。
   第2ゲームは佐伯選手が一気に勝負を決めてしまいました。
 
  佐伯選手の話
 『いつも以上に試合の入り方に注意し、集中して戦いました。
  第1ゲームはその差を詰められましたが、
 第2ゲームは突き放すことができて良かった。
  山田選手に対しては負けられないという気持ちが強い。
  明日は挑戦者の気持ちで、佐々木選手にぶつかっていきたい』

  山田選手の話
 『立ち上がりが大事なことはわかっていて、
 自分でも集中して入ったはずだったのですが……。
  佐伯選手は試合運びが上手かった。
  ああいう上手さを、自分でも身につける必要があります』


  女子ダブルス

  松尾静香&内藤真実ペア(三洋電機)
       2(21−15、21−15)0 多谷郁恵&脇坂郁ペア(三洋電機)

  同チーム内の戦いは、若手の松尾&内藤ペアが制しました。
  多谷選手の本格的な復帰戦となった今大会ですが、
 この試合に限っては、多谷&脇坂ペアにミスが目立ち、
 松尾&内藤ペアには、高い集中力が見られました。

  内藤選手の話
 『昨日は自分たちのミスから失点を繰り返し、苦しい試合をしてしまいました。
 その反省をし、今日は吹っ切れて、思い切ったプレイができたと思います。
  ただ2ゲーム目、マッチポイントを握ってから
 失点を重ねたという反省点もあります。
  そこを修正して、明日の試合にのぞみたいと思います』

  松尾選手の話
 『昨日の反省を活かし、相手に向かっていくプレイができたと思います。
 何より、そのことが今の私の課題なので。
  内藤選手と組んだからではなく、
 自分がもっと闘志を前面に出して試合をすることです』


  赤尾亜希&今別府靖代ペア(ヨネックス)
       2(21−17、21−18)0 日野由希江&小池温子ペア(広島ガス) 

  赤尾選手、今別府選手というダブルスのスペシャリスト同士が
 ペアを組んだのは年が明けてから。
  大阪国際チャレンジの悔しい敗戦を糧に、
 今大会では1ゲームも落とさない、安定した戦い方で決勝戦進出です。

  今別府選手の話
  『大会前はなかなか調子が上がらず、あまり自信が持てませんでした。
  でも試合になれば、やっぱり負けたくないと思う自分がいて、
  段々と気持ちの上でも上がってきたように思います。
   大阪での悔しい負けがあって、
  その後2人で練習してきたことがこういう形になってきたと思います。
  ここまで来たからには、明日の決勝戦、絶対に負けたくない』

  赤尾選手の話
  『思ったより良い感じで戦えています。
  前のパートナーの松田選手が引退して、
  自身の新たな目標を見出すのが難しい時期もあったのですが、
  今別府と組んで、新たなモチベーションが生まれてきました。
   今は肩の力が抜けて、楽しんでバドミントンと向き合えている。
   それで気持ちにも余裕が生まれて、
  試合全体、コート全体を見れるようになっています。
   明日は挑戦者の気持ちで試合ができます。
   でもコートに立ったら、
  負けたくないという気持ちが芽生えてくるでしょうね』


  男子ダブルス

  平田典靖&橋本博且ペア(トナミ運輸)
    2(22−20、21−14)0 劉志遠&黒瀬尊敏ペア(トナミ運輸)

  同僚対決は、第1ゲームこそ競ったものの、
 第2ゲームに入ると平田&橋本ペアがペースを握りました。
  そのまま一気に勝負を決め、決勝進出です。


  佐藤翔治&川前直樹ペア(NTT東日本)
   2(16−21、21−15、21−17)1 安村康介&米隆夫ペア(トナミ運輸)

  第1ゲーム、佐藤&川前ペアはペースに乗れず苦しい展開。
  今大会、初めてゲームを失います。
  しかし抜群の修正能力を見せ、
 第2ゲーム以降立ち直り、一気に勝負を決めてしまいました。
  このペアの能力の高さを実感させてくれる試合でした。

  ランキングサーキットは明日が最終日。 
  午前10時、女子シングルス決勝からスタートします。
  各種目、熱戦に期待したいと思います。

            (取材・文/ライター・佐藤純郎)

【四日目観戦記】

 ランキングサーキット大会5月26日最終日

 いよいよ大会は最終日です。
 各種目の決勝戦が行われました。

 女子シングルス決勝:
 今別府香里選手(三洋電機)
 2(12−21、21−19、21−15)0 幡谷好美選手(NEC SKY)

 今別府選手の話
『試合前は緊張しました。
第1ゲームは中盤からミスが続いて落としたのですが、この大会では
第1ゲームを落としても逆転勝ちができていたので、焦りとかはなかった
です。
第2ゲームの終盤では、“負けたら悔いが残る。次の一本に集中して、
強気で行こう!”と、気持ちが切り換えられたのが良かった。
ファイナルゲームでは、中盤以降も自分の足は動いていたので、幡谷選手
の動きをしっかり見る冷静さがありました。
優勝はしましたが、自分のプレイの弱点や悪い点もたくさん出たので、
納得はしていないです。
でも、同じチームの廣瀬(栄理子)選手や関谷(真由)選手に勝ったのに、
優勝できんかったら、大変だなあと思っていたので、その点ではホッとして
います。
久々の優勝なので、この先の自信にしたいと思います』


 男子シングルス決勝:
 佐々木翔選手(トナミ運輸)
 2(18−21、21−18、21−7)1 佐伯浩一選手(NTT東日本)

 佐々木選手の話
『第1ゲームは完全に向こうのペースで試合をしてしまいました。それでも、
試合の展開に関わらず、例え調子が悪くても、こうした試合では何より勝つ
ことが大事。
勝つことで次の段階に進めることも多いと思っています。
苦しい試合でしたが、“地力”では自分の方が上と言い聞かせながら試合を
していました。
合宿からスディルマン杯、そしてこの大会と、疲れがないと言えば嘘になり
ますが、ここが頑張りどころなので、これらの経験を次に活かしていきたい』

 佐伯浩一選手の話
『いい形で試合に入れて、ペースを握って第1ゲームを取ることができました。
 できれば、あのまま第2ゲームで押し切りたかったのですが。17−13のとき、
慎重になり過ぎたというか、球を置きに行く感じになってしまって、そこから
一気に逆転を許すことになってしまいました。あの展開から逆転できるという
ことは、まだ向こうの底力が上回っているということでしょう。残念な結果に
なりましたが、またチャレンジします』


 女子ダブルス
 松尾静香&内藤真実ペア(三洋電機)
       2(21−12、14−8)0
赤尾亜希&今別府靖代ペア(ヨネックス)
 *赤尾選手の体調不良による途中棄権。

松尾選手の話
『大阪国際の時の悔しい思いを、今回の優勝で、少し、取り戻せたかもしれませ
ん。結果や内容より、1試合、1試合に集中してバドミントンができたことが
良かったと思います。
今後の課題としては、この勢いを継続させる、右肩上がりにさせることだと感じ
ています。海外遠征や全日本実業団では、しっかり結果を残したい』

 内藤選手の話
『日曜日の反省から昨日と今日、ガマンするところではガマンをして、自分たちの、
良いリズムで試合をできたことが結果に結び付いたと思います。
 私は何より体作りを優先させていきたい。練習でもコートに4人が入ると、私が
一番先に疲れが出てきますから。それから、ラリーになったときに打ち勝てる技術
も身につけたい』


 男子ダブルス
 平田典靖&橋本博且ペア(トナミ運輸)
     2(21−17、21−15)0
        佐藤翔治&川前直樹ペア(NTT東日本)

 平田選手の話
 スディルマン杯の経験のおかげか、全く緊張せずに試合に入ることができました。
男子ダブルスには、国内の強いペアが全員参加していたわけではないけれど、優勝は
優勝だと思っていますし、勢いがあると感じていた佐藤&川前ペアに勝てて、嬉しい
というより、ホッとしたという気持ちの方が強いですね』

 橋本選手の話
『スディルマン杯に出場して、ナショナルメンバーの一員という気持ちが強くあって、
やらなきゃいけないと思っていたし、負けられないという気持ちも強くありました。
そんな中でこうしてひとまず結果を残せて良かった。
 この先も合宿、遠征、それから全日本実業団と続くので、挑戦者という気持ちを失
わず、向かっていこうと思います』

 佐藤&川前ペアの話
『優勝が目標だっただけに、結果は残念でした。
でも、今日の試合では、自分たちのサービス回りでの反応のスピードやサービスその
ものの技術など、課題が多く見つかったという収穫もありました。
僕らはラリーにもっていきたいのですが、そこにいたるまでの技術をもっと磨いて
いきたい』


            (取材・文/ライター・佐藤純郎)