7月7日/第5日目 決勝戦
日本ユニシスが初のアベックV

 大会最終日となる7月7日、全日本実業団選手権は、決勝戦が行われ、男女ともに日本ユニシスが頂点にたどり着いた。男子は2連覇3回目、女子は初優勝。詳しい試合結果はコチラから。

●男子決勝Results

   日本ユニシス 3-1 NTT東日本
   早川/遠藤  2-1 小松崎/竹内 
   数野/山田  2-0 川前/田児
   上田 拓馬  1-2 桃田 賢斗
   坂井 一将  2-0 和田  周

●女子決勝Results

   日本ユニシス 3-0 ルネサス
   栗原/篠谷  2-0 前田/垣岩 
   高橋/松友  2-0 福万/與猶
   高橋沙也加  2-0 峰  歩美

●最優秀選手賞

   早川賢一/遠藤大由(日本ユニシス) 栗原文音/篠谷菜留(日本ユニシス)

●敢闘選手賞

   桃田賢斗(NTT東日本) 福島由紀(ルネサス)

第5日目NEWS
●ダブルス陣に薫る自信。男子ユニシス2連覇へ

 第4試合。1ゲームを取られたあと迎えた2ゲーム20-19。ここで負けたら優勝杯は相手に渡ることが決定する場面で、NTT東日本の和田周は猛然とネット前にラッシュし素早いクロスネットを相手コートに落とした。
 これが決まったと歓喜の雄叫びをあげるが、次の瞬間、和田を絶望に突き落とすオーバー・ザ・ネット(*注)の判定が下った。
 和田の動揺は推してはかるべしだが、騒然としたあとだけに、日本ユニシスの坂井にとっても平常心を保つのは難しい状況だっただろう。しかし、両者がそこを我慢して気持ちを切り替え、勝ちにこだわり戦った。
 結局、試合は22オールと均衡したが、最後まで堅実にラリーをつないだ坂井がウイニングポイントを掴んだ。
「NTTにはこのあと田児選手が控えていたので、絶対次に回したくなかった。僕がヒーローになるんだという気持ちで戦いました」(坂井)
 日本ユニシスが2年連続3回目の優勝を飾った。

ダブルス陣のパワーアップでいっそう強く

 昨年よりさらに強くなっていることを印象付けた。その力の源は、トップダブルスの早川/遠藤の存在だろう。1年前、ロンドン五輪行きの切符を逃してから、2人はいっそう勝ちにこだわる雰囲気を醸し出すようになった。そうなると成長は早い。
 今年3月、日本史上初の全英2位の快挙を演じ、世界ランキングは4位まで上昇。NTT東日本戦では、小松崎/竹内のプレーに慣れず1ゲームは落としたが、2・3ゲームは11、16本の貫録勝ちをした。「(団体戦は)最初が大事。勢いをつけてほしかった」という坂本監督の願いに応えてみせた。
 続いて経験者の底力を発揮したのが数野/山田だ。今年、大阪インターナショナル、日本ランキングサーキットで優勝している2人は、川前/田児に攻撃の機会を与えずストレート勝ちだった。
「もともと大物食いできる力がある。足を動かし、スピードとローテーションで勝負していきました」
坂本監督が振り返った一方で、NTT東日本の町田監督は、「ダブルスの経験はさすがにあちらが上。田児にはいろんな技術があるとはいえ、ダブルスの練習はほとんどしていない。相手のレベルがここまで上がると、ダブルスの速い展開の中で技術を出すのは難しかった」と完敗を認めた。
 このあと、日本ユニシスは上田拓馬桃田賢斗に敗れたが、坂井が接戦をものにして歓喜に沸いたのは冒頭の通り。選手たちに囲まれた坂本監督は、2連覇について「総合力によるものです。でも総合力のアベレージは去年より上がっている」とチームの進化を強調していた。

戦いのあとで~選手&スタッフコメント

●NTT東日本・町田監督
「準決勝のトナミ戦をいい形で勝ちすぎた。それでイケルかなと思っちゃったけど、そう簡単にはいかなかったですね(苦笑)。小松崎/竹内が(世界ランキング4位の)早川/遠藤に1ゲームを取ってくれて出だしの流れは悪くなかったんですが。川前/田児は元日本代表で経験豊富な数野/山田にはごまかしがきかなかった。若い園田/嘉村(トナミ運輸)には対応の仕方があったんですけどね…。まだ18歳なのに0-2で回ってきたプレッシャーに負けなかった桃田は次につながる試合ができた。ただし、いろんなパフォーマンスはカッコつけすぎ(笑)。苦しいなか、そういう余裕らしきものは僕は好きですけどね。汗のはらい方も田児は泥臭いけど、桃田はスマートでカッコいいんですよ(笑)」

●NTT東日本・桃田賢斗
「昨日の佐々木さん(翔・トナミ運輸)はやりやすいんですが、上田さんはレシーブが堅いので苦手で…。自分、決まらないと、勝手にミスし始めちゃうんですよ。個人戦だったらもっと攻めていくところですけど、今回は団体戦なので雑なプレーはできないし、自分の動きもだんだんと遅くなっているのがわかっていたので、攻めるのが怖くなっていました。だから今日の勝因は“我慢”。個人的にも大きい勝利でした。次も上田さんに勝ちたいです」

*注:競技規則第13条第4項(2)にあるフォルトの規定を便宜上、“オーバー・ザ・ネット”と表現しました。

第5日目NEWS
●フレッシュな旋風。日本ユニシス女子が初優勝へ。

「絶対勝つぞー」というキャプテン栗原の澄み切った声が館内に響く。ルネサスとの決戦前、呼応する他のメンバーたちの声にも決意がこもる。
 日本ユニシス女子は2008年の創部以来、2度決勝へ進出した。だが、いずれも頂点には届かず。過去、日本リーグや全日本総合での優勝は手にしている日本ユニシス女子にとって残る最後の“砦”がこの全日本実業団だった。
「今回はどうしても勝ちたかった。去年の日本リーグで負けたのは、チームに(エースの)高橋/松友頼りの部分があったからだとみんなで反省したんです。もう同じことは繰り返したくなかった」(栗原)

全員がエースという考え方が果実をもたらした

 そんな秘めた思いが本物だと証明したのが栗原/篠谷だった。準々決勝、準決勝では2試合ともファイナルセティングで勝ち、チームに貢献している。そして今日。ルネサスのビッグネーム、前田/垣岩に勝った。
 圧倒的ともいえる展開だった。「最初から相手が引いているのがわかった」という2人は、立ち上がりからリードを奪い、シャトルに集中しきっていた。1ゲーム前半を6本で折り返すと結局12本で奪取。2ゲームは中盤まで競るが、篠谷「もう1回! もう1回!」という叫び声に勇気づけられたように、栗原が猛打を浴びせ、先制点を奪った。
 じつは栗原は昨年、ケガを負い、約半年間の治療を余儀なくされていた。ダブルスを本格的に始めたのは今年からで小宮山監督「栗原はまだダブルスのこと、まったく知らないんです」と打ち明ける。金星奪取は、「勝ちたい」という強い思いがあったからこそだろう。
 そして、この“勝利への決意”を託された高橋/松友は、現役日本チャンピオンの凄みを見せた。福万/與猶に11、15本の圧勝。続いて今年、パナソニックから移籍した高橋沙也加は、小柄ながらねばり強いに執拗にラリーされながらも、随所に持ち味である攻撃で鋭く決めて、ウイニングポイントをゲットした。
「一人ひとりが勝つんだ! と思ったすえの勝利です」
 チームの創設メンバー栗原は、大きな目を潤ませていた。

戦いのあとで~選手&スタッフコメント

●日本ユニシス・小宮山元監督
「今回は勝つ可能性を優先したオーダーにしました。高橋/松友を2Dに回して確実に1本を取りに行ったんです。ルネサスはトップダブルスに末綱/前田を立ててくるだろうという予測は外れましたが、栗原/篠谷が前田/垣岩に勝つうれしい誤算で。個々の能力を比べたら、相手とは天と地ほどの差がありますが、むこうは組んで間もないし、役割分担がまだはっきりしていなかった。今回は計算できない勝利に恵まれ優勝できましたが、2複1単の日本リーグでは、勝利を計算できるダブルスをもう一つ育てたいです」

●日本ユニシス・栗原文音キャプテン
「キャプテンとしてチームを引っ張りたいという思いがあり、今日の試合に勝ちたかったんです。いつも高橋/松友に頼ってばかりなのも嫌で…。緊張はありませんでした。相手(前田/垣岩)が強いのは分かっているので、私たちは自分たちのできることをやっただけ。相手のほうがプレッシャーがあったと思います。また私たちは前衛につかまって負けることが多いのですが、今回、相手が2人とも後衛タイプでネット前で仕掛けてくる感じではなかったのが私たちにはよかったです」

●日本ユニシス・松友美佐紀
「今回、実業団で初めて優勝してみて、優勝するときはそれぞれの選手が精いっぱい自分のやるべきことをやっているときなんだと感じました。自分で言うのは変なんですが(笑)、私たちが去年のリーグで負けてチームも負けたとき、いろんな人が“高橋/松友に頼りすぎた”と反省していたんです。私としてはそう思わせてしまったことが申し訳ないのですが…。でも以来、それぞれが自分のできることをやろうと、チームにいい雰囲気ができていたと思います。とくに栗原/篠谷はびっくりするくらい試合ごとに強くなっていきましたね」

●日本ユニシス・篠谷菜留
「相手(前田/垣岩)はビッグネームなので、最初から引かずに向かって行く気持ちで攻めて攻めていこうと思っていました。初優勝に向かって力が入ってました」

●日本ユニシス・高橋沙也加
「試合の1週間前、ずっと調子が悪くて、泣いていたというか、毎日落ち込んでいたんです。今日もいいところが全然なくて…。調子がよくないなか、勝てたことは自信になりました。日本ユニシスに移籍して感じることは、“若いチーム”だということ。私よりたった3歳上の人が最年長で、上下関係はあるけど、誰かが落ち込んでいるときには家族のように接してくれるので、決してチームの雰囲気が悪くなることはないんです」

●ルネサス・今井彰宏監督
「今朝まで待ちましたが、結局、末綱のコンディションがよくなく、トップダブルスは前田/垣岩で行きました。うちはダブルス2本を取っての勝ち方しかできないのでプレッシャーがあったんでしょう。前田/垣岩は最後まで力みがとれませんでした。できればダブルスを1つとって、最終試合の福島までつなげたかった。これまでのルネサスは末綱、藤井という柱になる選手がいてこそ。残念ですが、今回の結果がいまのルネサスです」